

株式会社ツヤヤカの床ずれの潤、通称とこじゅんです。
8年間のニート生活を経て、株式会社ツヤヤカに採用されました。
履歴書と職務経歴書を忘れた面接は、およそ3分で終了。
そして入社1か月目、僕は現場へ入ることになりました。
ここでいう現場は、クレーンや鉄骨が並ぶ大規模な建築現場ではありません。
主に住宅や賃貸物件などの室内で行う、内装仕上げ、設備交換、大工・建具の補修、原状回復工事の現場です。
屋内だから安心だと思いました。
屋内にも、僕にできない仕事はたくさんありました。
ツヤヤカの室内現場では何をするのか
現場へ着いて、施工部長のたーなさんに今日の作業を聞きました。
「クロスと床。設備の交換と、建具の補修もある」
一つの部屋でも、工事の内容は一つではありません。
例えば、原状回復やリフォームの室内現場には次のような作業があります。
古い壁紙を剥がし、新しいクロスへ張り替える
CFやフロアタイルなどの床材を施工する
巾木や見切り材を取り付ける
蛇口や水栓、照明などの設備を交換する
ドア、枠、建具の動きや傷を補修する
作業前に床や壁を養生する
寸法を測り、必要な材料を準備する
施工後に片付けと清掃を行う
文章にすると順番のある仕事に見えます。
実際の現場では、複数の作業が同時に進みます。
僕の頭は、最初の説明でほぼ満員になりました。
クロスと床材は、見た目より重い
最初の仕事は、材料を室内へ運ぶことでした。
たーなさんは、クロスのロールと床材の箱をまとめて運びます。
僕は小さなロールを一つ持ちました。
足が震えました。
「同じ人間とは思えない」
現場の人は、ただ力が強いだけではありません。
材料を傷めない持ち方、狭い通路の通り方、どこへ置けば次の作業がしやすいかまで考えて動いています。
僕は落とさないことで精いっぱいでした。
同じ材料を持っていても、見えている仕事が違います。
「青いカッター取って」で止まる
室内の内装工事では、多くの工具を使います。
カッター、地ベラ、ローラー、定規、メジャー、コーキングガン、ドライバー、レンチ。
作業内容によって、形や大きさの違う道具が並びます。
たーなさんに言われました。
「とこじゅん、青いカッター取って」
床を見ると、青い物がいくつもあります。
「青い……?」
「右の細いやつ」
右側にも細い物が複数あります。
現場の人には一つに見える指示が、僕には選択問題に見えました。
しかも、選択肢が多いわりに正解しても点数は入りません。
メジャーは伸ばすより、戻すほうが怖い
次に、室内の壁や床の寸法を測りました。
メジャーは知っています。
伸ばして、数字を読む道具です。
問題は、伸ばしたあとでした。
手を緩めると、金属のテープが勢いよく戻ります。
「バチン!」
「メジャー、戻るの速すぎません?」
たーなさんは落ち着いて言いました。
「手、離すなよ」
正しい答えです。
しかし僕の手は、驚くと本人の許可なく離れます。
「養生しといて」を休憩の指示だと思った
工事の前には、作業する場所以外を傷つけたり汚したりしないよう保護します。
床へシートを敷く。
テープで固定する。
壁、建具、設備など必要な部分を覆う。
これを「養生」と呼びます。
当時の僕は知りませんでした。
たーなさんに言われました。
「次、養生しといて」
僕は毛布をかぶり、お茶を持ちました。
「はい。体を大事にします」
「床の話だ」
会社が僕の健康を気遣ってくれたわけではありませんでした。
守る対象は床でした。
1か月で上達したのは、邪魔をしないこと
クロスが張り替えられ、床材が施工され、設備や建具が整っていきます。
たーなさんは、次に必要な作業を判断しながら動きます。
僕は工具の名前を覚えようと、ノートを持って現場の端に立っていました。
入社から1か月。
少しだけ上達しました。
人が通る場所に立たない。
材料を置く場所をふさがない。
分からないまま工具を触らない。
邪魔をしないことだけ、上手になりました。
現場から戦力外、次は営業へ
ある日、事務所へ呼ばれました。
デスクの向こうには、怖い顔の社長が座っています。
その隣には、施工部長のたーなさんが立っていました。
口元は笑っています。
こめかみには、はっきりと怒りの四つ角マークが浮かんでいました。
笑顔と怒りは、同時に存在できるようです。
この1か月、たーなさんは怒鳴らず、工具の名前も、メジャーの使い方も、養生の意味も教えてくれました。
たぶん最後まで、アンガーマネジメントを実践していたのだと思います。
マークだけは、管理しきれなかったようです。
「とこじゅん。明日から現場じゃなくていいよ」
ついに来ました。
「クビですか?」
「現場だけね。次は営業」
会社をクビになったわけではありません。
現場から営業への配置転換でした。
たーなさんは笑顔のまま、何も言いませんでした。
何も言わないことが、いちばん優しい場面もあります。
入社1か月。
安全だけは確保されました。
未経験から内装工事を覚えるには
僕は1か月で現場を離れましたが、未経験だから内装工事ができないという話ではありません。
実際には、現場で基本を教わりながら経験を重ね、職人として技術を身につけていく人がいます。
未経験から始める場合は、次のような姿勢が大切だと思います。
工具や材料の名前を少しずつ覚える
分からない指示は、勝手に判断せず聞き直す
安全に関する決まりを守る
養生や片付けを軽く考えない
作業の速さより、最初は正確さを意識する
先輩の動きと材料の置き方を見る
同じ失敗を繰り返さないようメモする
僕はメモをしました。
メモをした場所を忘れました。
職人への道は、工具より先に記憶力が必要だったのかもしれません。
室内工事は、仕上がりをつくる仕事
クロス、床、設備、建具。
室内の工事は、生活する人が毎日目にし、触れる場所を整える仕事です。
壁紙がきれいになる。
床が歩きやすくなる。
扉がスムーズに動く。
水まわりや照明が使えるようになる。
一つひとつは部屋の一部分ですが、それらが揃って初めて安心して使える空間になります。
僕にはうまくできませんでした。
だからこそ、できる人のすごさが少し分かりました。
次回、営業でも戦力外通告
現場を離れた僕の次の配属先は営業でした。
営業同行で僕が用意したものは、提案力ではありません。
「はい」
「なるほど」
「そうなんですね」
三種類の相づちです。
これで一日を乗り切ろうとしました。
乗り切れませんでした。
株式会社ツヤヤカについて
株式会社ツヤヤカでは、住宅、賃貸物件、店舗、事務所などの室内工事をご相談いただけます。
クロス張替え
CF・フロアタイルなどの床施工
設備の交換・修理
大工工事、建具補修
原状回復工事
リフォーム、リノベーション
「壁紙や床が古くなった」
「扉や設備の調子が悪い」
「退去後の部屋をまとめて直したい」
「どこまで工事が必要か分からない」
そのような段階でも、お気軽にご相談ください。
見積もりは無料です。
今日のとこじゅん
現場から外れた日、僕の安全性だけが向上した。
次は営業です。
安全靴は脱げましたが、安心はまだできません。